中学校教材

「単元テスト」による指導と評価の一体化(高知県高知市立南海中学校)

「単元プリント」や「テスト作成システム」を活用し単元テストでの評価に取り組む

高知県高知市立南海中学校での「単元プリント」と「テスト作成システム」を使った,

単元テストで評価を行う取り組みをご紹介します。

高知県高知市立南海中学校

高知市の桂浜を望む,自然豊かな地域に位置する中学校です。

1年から3年まで各学年2クラス,特別支援学級2クラスの計8クラス構成。

生徒会活動や部活動,学校行事も盛んに行われています。

2021 年3月にはGIGAスクール対応のための工事が完了しました。

 

近くにある県立坂本龍馬記念館では,坂本龍馬の残した歴史が学べます。

学校のキャラクターは,海と龍馬をイメージした「海龍くん」です。

背景とねらい

新学習指導要領では,評価について,単元のまとまりごとで行うことが示されています。

しかし従来のような定期テストで評価しようとすると,試験範囲が単元の途中になるなど,

それに沿わない場合があることが課題でした。

 

そこで本校では,定期テストを廃止し,単元テストで評価を行う取り組みを始めました。

この取り組みは,生徒をしっかり評価していくことをめざしたものです。

 

また,教師の「働き方改革」の進展もあり,単元テストの作成にあたっては,

各出版社が発行している「単元プリント」や新学社の「テスト作成システム」*1) を使用することとしました。

* 1) 大問ごとに収録した問題データベースから問題を選択し,WEB 上でテスト問題が作成できる。

取り組みの詳細は

単元テストの概要は,次に示す通りです。

 

国語と社会は各出版社が発刊している単元プリントを,

数学・理科・英語は新学社の「テスト作成システム」を使用して単元ごとにテストを作成し,

その結果を評価に使っています。

 

このように,教科によって単元プリントとテスト作成システムを使い分けていることが特徴のひとつです。

テスト作成システムは,教師が自分でデータベースから問題を選択できる点が便利です。

 

テストの実施後には「加力学習(補習)」を行い,できなかった生徒へのフォローを行っています。

 

評価にあたっては,教師が研究会で教科ごとに「単元指導計画表」を作成し,教師間で共有しています。

これは,その単元を通して生徒にどんな力をつけてほしいかを設定し,

そこから,授業時間・学習内容ごとにどんな力が身につけばよいか,

どの場面でどんな評価をするかを定めたものです。

これによって,担当が変わっても同じ指導・評価ができるようになっています。

一般的には教師は同学年のクラスの授業を担当します。

しかし高知県では,1年から3年までの同じ1組をひとりの教科担当が指導する「縦割り方式* 2)」を採用しています。

したがって,教科担当が変わることで同じ学年間に指導に差が生じないよう,

しっかり目線を揃える必要があります。計画表にはこういった背景もあります。

 

縦割り指導のメリットとして,中学3年間の学びのつながりがイメージしやすく,

学習全体を見通した指導が可能だということがあります。

また,教科担当がそれぞれの学年の授業を協力して作っていく「チーム力」の向上にも一役買っています。

* 2)「教科担任タテ持ち制」ともいう。一人の教師が3学年をまたいで教科を担任する。3 年間の見通しをもった指導が期待できるとともに,同じ教科の教員同士が授業内容や進度について情報交換をする必要性が生まれ,若手教員の授業の質の向上につながるとされる。

生徒・保護者へどう説明したか

2020 年度末には,定期テスト方式から単元テスト方式への移行に関する説明文書を保護者に配布しました。

 

2021 年度が始まるとすぐに,校長自ら資料を作成し,

「新学習指導要領が変わることで評価そのものの考え方が変わる」という背景部分から,

単元テストの目的や方法,注意事項等を丁寧に説明した文書を改めて保護者向けに配布しました。

 

生徒に対しても,定期テスト方式による評価方法から単元テスト方式の評価方法に移行することについて,

全校生徒に対して集会(新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施)で説明しました。

 

また,各単元の短い期間のまとめで本当に力がつくのか不安に感じる保護者もいると考え,

単元テストのほかに「学力診断調査」(実力テスト)も使うことにしました。

前者で短期間の振り返り,後者では入学時からの長い期間の振り返りを行い,定着度を上げる体制をつくっています。

 

学習指導要領が変わるタイミングでの導入となったことで,

比較的スムーズに受け入れていただくことができたと感じています。

生徒・保護者の反応は

新しい制度に変わった当初,6月あたりまでは,これまでのやり方に馴れている2・3年生から

「テストの回数が増えたので以前に戻して欲しい」という声が上がっていました。

 

いっぽう1年生は,小学校の学習の流れに近いため,単元テストにすぐに馴染んでいきました。

かわりに「テストのために勉強をしなくては」という意識は,上の学年に比べて薄かったかもしれません。

 

今は,定期テストのために部活を休みにするなどの対応はせず,

生徒は学習と部活を両立させながら学校生活を送っています。

上級生にとって初めは戸惑いもあったでしょうが,現在はそれも受け入れて,日々たえず学習していく状況です。

 

以前のようにテスト範囲が広いと,学習に付いていくのが難しい生徒は意欲をなくしがちでした。

しかし単元テストの導入でテストまでの期間が短くなったこともあり,

生徒達は学習内容が理解しやすいと感じているようです。

 

途中で学習が途切れないことで,やる気が出てきた生徒もいます。

今までほとんど勉強していなかった生徒が,学習の切れ目を単元にしたことで

テスト勉強に取り組み始め,得点も上がりました。

お話しいただいた先生

大石教頭先生 , 白井先生(国語) , 石本先生(英語)

原田先生(英語) , 関川先生(数学) , 傍士先生(英語)

好学出版

思考力検定

日本教材文化研究財団