中学校教材

学習応援アプリの活用 (滋賀県彦根市立鳥居本中学校)

学習応援アプリの活用で生徒が自らの学びを管理し理解を深めるよう工夫

滋賀県彦根市鳥居本中学校での進学教材「新研究」と付属ICTツール「ちょいスタ」を使った,

学習の習慣づくりの実践をご紹介します。

滋賀県彦根市立鳥居本中学校

 

彦根市の東北部に位置する自然に恵まれた学校です。

平成27 年度より,鳥居本小学校とともに小中一貫型小・中学校「鳥居本学園」としてスタートしました。

小中一貫教育として,小中教員による相互乗り入れ授業等の実施や,

小学校高学年の一部教科で教科担任制による授業を行うなど,中学校とのなめらかな接続を図っています。

ICTモデル校として,GIGAスクール導入以前から生徒用のタブレット端末を使用しています。

進学教材の活用方法

現3年生では,1年次の最後から2年次の初めにかけて,コロナ禍による休校期間があったことから,

「基礎の強化」と,付属の「基礎の強化ドリル」を採用していました。

「基礎の強化ドリル」は,取り組んだ後はノートに貼り,分からない問題の解き直しを指導していました。

 

2年次の2学期からは,例年行っている入試対策学習のため,

「新研究」とその付属ドリルの「基礎のチェック」を採用しました。

2年次の初めに「基礎の強化」でのテキスト学習による学習習慣の定着が図れていたので,

「新研究」の学習にはスムーズに移行できました。

 

学習の流れは,まず宿題として「新研究」の本誌で学習し,

次の日の帰りの会の際に「基礎のチェック」を配付します。

10分間のうち,7分ほどで問題に取り組ませた後,残り3分で自己採点を行います。

取り組む教科は曜日ごとに変え,祝日等にあたった場合,抜けた教科は家庭で取り組ませています。

朝は読書の時間にしています。

 

基礎的な学力の定着には,このように,紙の媒体を使用する方が効果が高いと考えています。

中学校での活用実態~新シリーズの学習応援アプリ「ちょいスタ」を使って~

「新研究」に新しく登場した学習応援アプリ「ちょいスタ」を,本年度から導入しています。

「スケジュール管理」アプリには,生徒それぞれに,「新研究」の学習日と点数を入力させ,

学習習慣の一層の定着と,生徒自らの自己管理をうながすことを目指しています。

 

ただし,「ちょいスタ」に入力するよりも,直接ノートを提出したいという生徒もいますので,

アプリへの入力か,ノートの提出か,自分に合った方法が選択できるようにしています。

生徒の中には,データを入力することで自分の学習の軌跡が蓄積され,

振り返りに活用できることにメリットを感じる者が出てきました。

このように,自分の成長の手応えを感じられる生徒が増えていくと,学習へのプラスの効果が期待できそうです。

 

活用が深まっている一部の生徒は,我々教師と「ちょいスタ」を介したコメントのやりとりも行っています。

教師用に割り振られるIDは,管理を担当する複数の教師で共有しています。

初めは不便に感じましたが,実際に運用してみると,この方が,

生徒と教師間の閉じられた個人的なやりとりを防ぐことができると気づきました。

生徒のコメントを最初に見て返事をした先生の後に続けて,他の先生が書き込むことも可能です。

 

より多くの生徒がアクセスしやすいと感じるように,

「ちょいスタ」のスタート画面を生徒用タブレットの起動画面に組み込んだり,

ショートカットを置くなどの方法も考えたいですね。

まだスタートしたばかりなので,生徒の活用の度合いはそこまで高くないのですが,

夏休みに入れば,もっと活用の度合いが高まるでしょう。

タブレット端末活用に向けた今後の課題は

○使用ルールの確立・共有

生徒には,タブレット端末をどんどん使って学びを深めてほしいと思っています。

しかし一方で,一定のルールや規則は設定しなくてはなりません。生徒の自主性を保ちながらも,

どこまでセルフコントロールできるか見極めが必要となります。

 

この夏休み(2020年),彦根市内においては,生徒にタブレットを持ち帰らせています。

使い方をガチガチに規制することによって,タブレットをきちんと使える生徒が

使い方を広げることで得られる学びの機会を奪いたくありません。

かといって,全くノールールというわけにもいきません。

生徒会と引き続き話し合い,ルールの検討を行いたいです。

生徒たち自身での節制力やデジタル・リテラシーを高め,

内面から自制できるようにすることが大切になるでしょう。

 

○使用ルールの確立・共有

現在,タブレット端末へのアプリのインストールは,教師用も生徒用も許可制となっています。

新たにアプリを入れたい場合は,市教委に申請書を出して許可を得なければなりません。

 

その場合,無料アプリよりも,有料の方が推奨される傾向にあります。

というのは,何か問題が起こった場合,メーカーに責任をもってもらえるからです。

Scratch のように全世界で活用されている実績があるアプリなら,無料でも問題ありません。

指導上使わせたいアプリが出てきた場合,どのように管理者と交渉していくかについては,一考の余地がありそうです。

 

ほか,彦根市では,児童生徒は同じタブレットを9年間持ち上がって使うことになりますが,

当校は小中一貫型の学校にもかかわらず,小学校卒業時に一旦返却し,

小学校卒業後の春休みは家庭での使用ができません。このような点も検討が必要でしょう。

 

○生徒にどう定着させるか

 

タブレットの活用にすんなり慣れた生徒もいれば,

一方で,スケジュールアプリにすらなかなか入力をしない生徒もいます。

今後,学校でのICT 化はますます進みます。

生徒間で格差が生じないよう,苦手な生徒の興味を引くような機能を

アプリに付加することも検討してよいのではないかと思います。

生徒によって好みは様々ですから,思いつく限りの手を打つ必要があるのではないでしょうか。

お話しいただいた先生

中川昭典先生 (技術・数学・算数担当)

好学出版

思考力検定

日本教材文化研究財団