2月24日(土)に、鈴木惠子先生と宇野弘恵先生の共著『心を育てる』の出版を記念したセミナーが開催されました。
その際の様子をお知らせいたします。
「明日の教室」出版記念セミナー 開催報告
鈴木惠子先生&宇野弘恵先生・共著出版記念セミナー開催のご報告
セミナーの様子(レポート:立命館小学校 吉川裕子先生)
鈴木惠子先生、宇野弘恵先生によるセミナーが開かれました。全国各地から40名以上の方が参加されました。
左から、鈴木惠子先生、宇野弘恵先生
(撮影:立命館小学校 糸井登)
第一部「宇野先生講演」
第一部は「宇野学級の国語授業を通して、鈴木学級を語る」という題でした。
宇野先生は、十数年前、鈴木先生の「川とノリオ」の授業DVDを見て驚いたこと、子どもたちの発言が琴線にふれ、
一緒に見始めた近くの先生方も泣き始めたというエピソードをお話されました。
そして、このような授業はどうしたらできるのかという問いを立てられたそうです。
今年度の宇野学級の授業の様子や記録を通して、何を大切に指導されてきたのかをお話いただきました。
4月から、自他尊敬、自他尊重、話すこと、聞くことを大切にし、ただスキルだけを教えるのではなく、
なぜ話すこと・聞くことを大切にする必要があるのかを繰り返し伝えてこられたそうです。
教材研究を通して、ゴールをはっきりさせることで、授業の中での子どもたちのつぶやきや興味・関心に合わせた方法でたどり着けると話されました。
1年生が自分の考えを話し、友達の発言をよく聞いて深めていく様子がよく分かり、感動しました。
一方で、宇野先生は、子どもたちが物語に没入していないのでは、と思われたそうです。
教師の理想やつかませたい主題が子どもの実態と合っていないと、没入しない、同化しないことがあるのではないか、
物語は、自分だったらどうたろう、自分だったらこうすると同化し、没入し、つなげていくような授業を通して子どもたちの心が育っていくのではないか、とお話されました。
宇野弘恵先生
(撮影:立命館小学校 糸井登)
第二部「鈴木先生授業DVD視聴・鈴木先生講演」
第二部では、鈴木先生の「川とノリオ」の授業DVDを見ました。
鈴木先生は、とことん子どもが主体の授業を目指されていたそうです。映像でも子どもたちが真剣に話し、聞く姿がありました。
鈴木先生はほとんど話さず、子どもたちが自分の読みや経験を交えながら話し合っていました。
ビデオでは空気や温度感は伝わらないと言いながら、一文、一文と自分の考え・体験と結びつけて読み、自分の考えを何とか分かってほしいと発言し、
受け止めようとする様子から、まさに「子どもが主体」だということが感じられました。
教師だけでなく、目指す授業像を子どもたちとも共有することが大切だとお話されました。
国語では、「言葉ってすてきだな」と思い、相手に伝えようと言葉にすることが、知性や人間性の基礎になり、言葉への感性を育てていきます。
交流によって生きた言葉が獲得され、文学を愛する心が芽生え、豊かに人間らしく生きることにつながっていく、とお話されました。
「教科・教材の目標をこえた向こうにある子どもたちの人間形成のために授業はある」という言葉が心に残りました。
また、授業は発言者だけが作るのではなく、「誰もが主役である」とお話されました。
学びの主役は自分たちであるという意識があれば、どんな学習形態も主体的な学びになり、
スキルだけでなく、子どもたちの関係性や心を育てていくことになる、とお話されました。
鈴木惠子先生
(撮影:立命館小学校 糸井登)
第三部「鈴木先生・宇野先生対談」
第三部は鈴木先生と宇野先生の対談です。
鈴木先生は、先生が熱量を持って生きている姿を見て子どもたちが育つ、
その上で、「大人、先生方はもっと緩くていいのではないか、 『こうあらねば』とかたく考えすぎると、先生も子どもも大変ではないか」とお話されました。
また、子どもたちに自己肯定感を育てるためには、教師自身にも自己肯定感が必要で、自分の弱点もさらけ出してもいいのではないかとお話されました。
保護者と一緒に、子どもたちのことを考えていくためには、教師の側が先に発信することが大切だから、本よみカードに一言書くなどといったことを続けていたそうです。
先手で情報を出す手段として、学級通信の中でいいところをどんどん紹介していっていたそうです。
宇野先生も、学級通信を毎日書き、教室の様子や指導の前提を保護者と共有するようにされています。
また、子どもに対しても保護者に対しても同じように、自分の対応がよくなかったと思ったら心から謝るようにされているそうです。
弱さもさらけ出し正直に向き合うこと、正直と正直の間に愛着・信頼関係は築かれていく、学級経営がうまくいくことが働き改革につながる、と宇野先生はお話されました。
「このセミナーは『心を育てる』の出版で一旦終わりですが、また新たなスタートを切りたい」という糸井先生のお話で終わりました。
お二人とも、子どもたちに「自分が主役の人生」を歩む力をつけてほしい、
そのために授業でも主役は子どもたちであり、話を聞いて受け止めることを大切にしたいという願いを持って学級経営・授業をされていること、
子どもたちが主役の授業にするための深く、広い教材研究を進めてこられていること、
ご自身のキャラクターを生かし教師自身の弱さも見せながら、真摯に保護者や子どもたちに向き合ってこられたこと、など共通点があります。
私も、肩の力を抜いて、自分らしく子どもたちに向き合うことが大切だと思いました。
セミナーだけで終わらず『心を育てる』を読むことで、セミナーでの学びがさらに深まります。この本は、これから折に触れて読むことになるだろうと思います。
左から、鈴木惠子先生、宇野弘恵先生
(撮影:立命館小学校 糸井登)