11月25日(土)に、明日の教室セミナーが開催されました。
東北学院大学の佐藤正寿先生をお迎えして、3部制のセミナーとして実施されました。
「社会科教育のこれまでとこれから」というテーマでお話いただきましたが、その際の様子をお知らせいたします。
「明日の教室」セミナー第4回 開催報告
デュオセミナー開催のご報告
セミナーの様子(レポート:立命館小学校 吉川裕子先生)
2023年11月25日の明日の教室の講師は東北学院大学文学部教育学科の佐藤正寿教授でした。
2006年7月、2012年12月に続く3回目で、「社会科教育のこれまでとこれから」という演題です。
佐藤正寿先生 |
(撮影:平井良信)
第一部「社会科教育のこれから」
楽しいクイズから始まり、講座がすっかり温かい雰囲気になりました。
調査では社会科を好きな児童が少ないのだそうですが、こんな授業なら楽しい、好きだと思えるだろうなと感じました。
佐藤先生は、憧れの教師有田和正先生に出会えたことが、教師人生に大きな影響を与えたそうです。
有田先生の数々の名言を通し、1980年代の有田学級では、個別最適な学び、協働的な学び、反転授業がすでに実践されていたことを紹介されました。
佐藤先生ご自身は年間はじめに、単元ごとに児童を数人ずつ振り分け、先行プレゼンを体験させることを通して、授業活性化させていかれたり、
小西正雄先生の「提案する社会科」から学び、単元レベルで1つの事象を追及する学習に挑戦されたりしたそうです。
例えば、「学校のまわりに交通安全施設を1つ作るのなら、どこに何を作りますか。」という発問で、単元10時間かけて学び、手ごたえがあったとお話されていました。
いくつもの具体例をお話してくださいました。
佐藤正寿先生
(撮影:平井良信)
第二部「社会科教育のこれから」
まず、「不易流行」の意味を紹介されました。
この言葉は「不易」と「流行」と並列ではなく「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、
新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと」が正しい意味だそうです。
二部でも導入の工夫や社会科見学での注意点、ゲストを招くときの構成例など、たくさんの具体例を教えてくださいました。
「授業の複線化」として、児童が選択できるようになったのが90年代で、それまでの授業のあり方を変えましたが、その後「複線化」は話題にならなくなりました。
理由として、学習スキルを子どもたちが身に付けていないことが問題だったと指摘されました。
様々なスキルの良さを分かっていないと適切なものを選ぶことができないので、子どもたちの学習スキルを育てることが大切だとおっしゃいます。
例えば、発言の根拠を促す、資料と文章をどう一致させるか、発言の視点の具体例を教えるなど、
具体的な指導の積み重ねが、子どもたちの見方・考え方を広げるために大切だと教えていただきました。
「進みつつある教師のみ、人を教える権利あり」(ドイツ・教育学者ディスターヴェーク[ジステルエッヒ])という言葉で、第二部は終了しました。
佐藤正寿先生
(撮影:平井良信)
第三部 対談
第三部、糸井先生との対談では、今の教育界では「不易」と「流行」が分断されている、
これまでの社会科実践について知らずに個別最適や自由進度の実践を行っても、形はできても深みは生まれない。
それぞれの先生が、考え、追究し、突き抜けていくしかない、というお話になりました。
佐藤先生ご自身は、発問についてずっと研究されてきたそうです。
また、「先生はどんなことを授業のポリシーにしているのですか?」と聞かれて、そこにズバリ答えられる先生は、授業がうまいとおっしゃっていました。
私には難しかったのですが、参加者のみなさんがズバリと答えられていたことが印象的でした。
今、社会科教育に対する熱が下がってきているように感じられるが、社会科こそキャリア教育・総合、探究などの中核になるはずであり、
もう一度社会科熱を高めて、佐藤先生に2年後に来てもらう、と糸井先生から次回の予告がありました。次も楽しみです。
左から 佐藤正寿先生、糸井登先生
(撮影:平井良信)